Q. 製造・輸送・開発にかかるエネルギーを考えても、風力発電を導入する意味があるのですか?

A. 風力発電の標準的なエネルギーペイバックタイムは1年以下なので、導入後1年以上稼働が続く場合、風力発電はそれ自身の製造・輸送・開発にかかった以上のエネルギーを生み出します。

最終更新:2022年8月3日

風力発電の導入をエネルギー収支や炭素収支の観点から考える際には、「ライフサイクル」「エネルギーペイバックタイム」といった考え方を理解する必要があります。

ライフサイクル

原材料の採取・製造から、ブレード・タワーなどの製造、輸送、設置、運用、保守、解体、廃棄に至るまでの全体を風力発電のライフサイクルといいます。なお、風車の80%はリサイクル可能であるとされています。

エネルギーペイバックタイム(Energy Payback Time, EPT)

風力発電所がライフサイクルで消費する電力量を発電するまでに必要な稼働期間をエネルギーペイバックタイムといいます。

陸上風力発電のエネルギーペイバックタイム

ベスタス社の分析によると、2MW の陸上風車のライフサイクル全体のエネルギー消費量は 3,625MWh と算出されています。標準的な 2MW の陸上風車の場合、年間 5,650MWh の電力を発電するので、エネルギーペイバックは 7.7ヵ月 になると分析されています。

また、米国の研究者が行った太平洋岸北西部の大規模な風力発電所に設置された2MW の風車のライフサイクル評価によると、それらのエネルギーペイバックタイムは 5〜8ヶ月 であったと結論づけられています。

洋上風力発電のエネルギーペイバックタイム

ジーメンスガメサ社が国際基準 ISO14021 に基づいておこなった分析によると、同社の 8MW の洋上風車のライフサイクルでのエネルギー消費量(基礎、送電線への接続ケーブル、変電所を含む)は 20,900MWh と算出されています。標準的な 8MW の洋上風車は、年間約 34,000MWh の電力を発電するので、エネルギーペイバックタイムは 7.4ヵ月 となります。

また、科学研究雑誌『Applied Energy』に2016年に掲載された論文では、6MW の洋上風車のエネルギーペイバックタイムが 10ヵ月 と評価されており、規模や立地などの条件に幅があるとしても、陸上・洋上風力発電のエネルギーペイバックタイムは 1年以下 であると考えることができます。

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