最終更新:2022年10月19日
Q. 風力発電による騒音は、健康に影響を与えますか?
A. いまのところ、風車騒音が大きくなると煩わしさを感じる度合いも高まる可能性があることが報告されています。
これまでのところ、風車騒音に関しては次のような科学的知見が得られています。
- 風車騒音の大きさと煩わしさを感じる程度の間には、統計的に有意な関連が複数の論文で報告されている
- 風車騒音の大きさと睡眠の妨げの間には、直接的な関係性がある可能性を示唆する知見が報告されている(ただし、関連の科学的根拠は限定的)
- 風車騒音の大きさと睡眠の妨げの間には、煩わしさの程度が上がる結果としての間接的な関係性がある可能性を示唆する知見が報告されている(ただし、関連の科学的根拠は限定的)
- 風車騒音と聴力影響、頭痛、耳鳴り、糖尿病、高血圧、循環器疾患等の健康影響については、統計的に有意な根拠は認められていない
出典:環境省「風力発電施設から発生する騒音等への対応について」
これらを踏まえると、風車騒音の煩わしさにともなう睡眠影響が生じる可能性はあるものの、人の健康に直接的に影響をおよぼす可能性は低いと考えられます。
ただし、統計的に有意ではないという場合、それはあくまでも疫学的な知見として集団的に観察され得るほどの影響力は認めがたいということであって、そのような問題がないこと証明するわけではありません。
なお、風車騒音については、風力発電施設を主観的にどのようにとらえているかによって、煩わしさが変化することが多くの研究によって報告されています。例えば、これまでに下記のような知見が報告されています。
- 風力発電施設によって景観が損なわれたと感じる → 煩わしさの度合いが大きくなる
- 風力発電施設によって経済的利益が得られる → 煩わしさの度合いが小さくなる
出典:環境省「風力発電施設から発生する騒音等への対応について」
以上の科学的見地に立った上で、実際になんらかの症状を訴える人が存在することも事実であり、風力発電事業者は個別の事例において、ステークホルダーと丁寧なコミュニケーションを重ねることが重要です。
「風車騒音が健康に悪影響を与えるかもしれない」という情報に繰り返し接することで、煩わしさや他の健康影響を訴える可能性があるとする知見等も報告されていますが、これらをどのように評価するかは今後の課題となっています。
関連参考情報
- 環境省「風力発電施設から発生する騒音等の評価手法に関する検討会」
- 環境省「風力発電施設から発生する騒音等への対応について」
- Chapman, S., George, A. S., Waller, K., & Cakic, V. (2013). Spatio-temporal differences in the history of health and noise complaints about Australian wind farms: evidence for the psychogenic, “communicated disease” hypothesis.1–26.
- Chapman S, Joshi K and Fry L (2014) Fomenting sickness: nocebo priming of residents about expected wind turbine health harms. Front. Public Health 2:279. doi: 10.3389/fpubh.2014.00279
- Tonin R, Brett J, Colagiuri B. (2016) The effect of infrasound and negative expectations to adverse pathological symptoms from wind farms. Journal of Low Frequency Noise, Vibration and Active Control. 35(1):77-90. doi:10.1177/0263092316628257