最終更新:2022年9月22日
Q. 太陽光パネルには有害物質が含まれていますか?
A. 普及の多数を占めるシリコン系の太陽光パネルの電極には、鉛が使われていることがあります。太陽光パネルの電極は封止材で強固に封着されているため、保護ガラスやバックシートが破損したとしても、有害物質が直ちに環境に流出する可能性は非常に小さいと考えられます。
太陽光パネルには、「シリコン系」「化合物系」「有機物系」の3種類があり、実際に導入されている太陽光パネルの約95%以上がシリコン系です。
そのシリコン系の太陽光パネルは、図のようにフレーム、カバーガラス、封止材、太陽電池セル、バックシート、ジャンクションボックスで構成されています。リサイクルの際は、それぞれ構成素材毎に処理がおこなわれます。
これらの構成要素の中で、太陽電池セルの電極には銀や銅、錫といった原料が主に使用され、鉛も添加剤として使用されていることがあります。
鉛は過剰に摂取すると人体に有害であるため、メーカーが製造段階で鉛の含有量を減少させる取り組みを進めるとともに、太陽光発電協会のガイドラインにそって各社が情報提供をおこなっています。(情報提供企業一覧)
太陽光パネルが破損した際に、有害物質が環境を汚染する可能性が懸念されます。
上述のように、シリコン系太陽光パネルの構成要素の中で、有害物質である鉛が含まれているのは、太陽電池セルの電極です。そして、その電極は封止材で密封された上でカバーガラスとバックシートで保護されています。
そのため、事故や災害で太陽光パネルが破損したとしても、直ちに有害物質が流出して拡散する可能性は非常に小さいと考えられます。
ただし、破損したパネルが長期にわたって放置された場合には、有害物質が流出・拡散する可能性があるので、基本的にはリユース・リサイクル・適正処分がなされるように、体制を整えておくことが重要です。
シェアは少ないものの、シリコン系以外に「化合物系」の太陽光パネルが導入されています。
セレン
国内では、ソーラーフロンティア社が生産していた「CIS太陽電池」が代表的な製品であり、銅(Cu)、インジウム(In)、セレン(Se)が使用されています1国内での製造は2022年6月に終了:ソーラーフロンティア 2021年10月19日「CIS太陽電池モジュール生産終了後の保守・保証対応について」。有害物質の観点から、CIS太陽電池にはセレンが含まれているため、廃棄時にはメーカーに問い合わせる等の対応が求められます。
カドミウム
国外では、米国ファーストソーラー社がカドミウム(Cd)とテルル(Te)を使った「CdTe太陽電池」を生産しています(国内では生産されていません)。有害物質の観点から、同社は、販売したCdTe太陽電池を使用後に引き取り、製品に含まれるカドミウムをリサイクルしています2First Solar “The Recycling Advantage“。
参考情報
- 「自然電力のでんき」blog編集部(2022)「太陽光発電所の廃パネル問題とは? 何が問題で何が正しい?(前編)」HATCH.
- 「自然電力のでんき」blog編集部(2022)「太陽光発電所の廃パネル問題とは? 何が問題で何が正しい?(後編)」HATCH.
- PVリサイクル.com(2021)「パネルに含まれる成分(有用資源と環境影響)」
- 環境省(2018)「太陽光発電設備のリサイクル等の推進に向けたガイドライン(第二版)」
太陽電池モジュールの含有量試験および溶出試験(環境省)
環境省は「太陽光発電設備のリサイクル等の推進に向けたガイドライン(第二版)」の中で、太陽電池モジュールの各部位の含有量試験および溶出試験の結果を公表しています。
有害物質の観点から、下記の3点が基準値を上回る結果として指摘されています。ただし、「試料調製方法、分析機関により結果にばらつきが生じる可能性があり、評価にあたっては注意が必要」との付記があります。
- 結晶系のモジュールの一部(3検体)において鉛が燃えがら等についての基準値(0.3mg/L)を上回る結果となった。
- 同様に、化合物系モジュールの一部(2検体)においてセレンが燃えがら等についての基準値(0.3mg/L)を上回る結果となった。
- また、化合物系モジュールの一部(1検体)においてカドミウムが基準値を上回る結果となった。
以下は、試験結果と解説概要です。
出典:環境省「太陽光発電設備のリサイクル等の推進に向けたガイドライン(第二版)」
廃棄物資源循環学会物質フロー研究部会にて検討された標準分析法をベースとして、国内、国外の計27サンプルにつき、太陽電池モジュールの含有量試験を実施したところ、鉛、アンチモン、銅、すず、銀といった物質が含まれていることが判明した。
含有量試験結果
出典:「平成25年度 使用済再生可能エネルギー設備のリユース・リサイクル促進調査委託業務 報告書(環境省)」
平成30年度リサイクルシステム統合強化による循環資源利用高度化促進業務(環境省)において 三菱総合研究所作成
有害性の観点から注意が必要な物質の溶出について、太陽電池モジュールを対象とした公定試験法や基準等は存在しないため、金属等を含む産業廃棄物に係る判定基準を定める省令に基づき定められている方法及び基準(環境庁告示第13号試験及び燃えがら・ばいじん・鉱さい・汚泥等についての廃棄物処理法による特別管理産業廃棄物の判定基準)に準じて太陽電池モジュールの破砕片の溶出試験を実施したところ、結晶系のモジュールの一部(3検体)において鉛が燃えがら等についての基準値(0.3mg/L)を上回る結果となった。同様に、化合物系モジュールの一部(2検体)においてセレンが燃えがら等についての基準値(0.3mg/L)を上回る結果となった。また、 化合物系モジュールの一部(1検体)においてカドミウムが基準値を上回る結果となった。なお、試料調製方法、分析機関により結果にばらつきが生じる可能性があり、製品の評価にあたっては 注意が必要である。
溶出試験結果
※ 試料調製方法、分析機関により結果にばらつきが生じる可能性があり、評価にあたっては注意が必要。追加分析試験の結果、同一製品を同一の調製方法で分析した場合であっても、0.02~1.1mg/L と分析機関によってばらつきのある結果が得られている。
出典:「平成25年度 使用済再生可能エネルギー設備のリユース・リサイクル促進調査委託業務 報告書(環境省)」
平成30年度リサイクルシステム統合強化による循環資源利用高度化促進業務(環境省)において 三菱総合研究所作成
- 1国内での製造は2022年6月に終了:ソーラーフロンティア 2021年10月19日「CIS太陽電池モジュール生産終了後の保守・保証対応について」
- 2First Solar “The Recycling Advantage“